本記事は、一本の記事の内容のスリム化と分かりやすさのために、前の記事で書いている『子どもたちに最初に伝えるべきこと』の記事の内容についてご理解いただけているという前提で書いていますので、ご了承ください。
小学校教員の仕事を避ける理由として、モンスターペアレントからのクレーム(クレームにも大切な気づきがある場合はあります)対応があります。確かにモンスターペアレントは存在します。しかし、クレームを入れることが好きだというモンスターペアレント(真のモンスターペアレントと名付ける)はかなり稀です。どの民間企業にも、最悪な顧客は存在します。それとさ変わりはありません。それで言うと、一年たてば合わない親ともさよならバイバイできる分だけ、民間企業や関係の関わりを断ちにくい自営業者の方がよっぽど辛いと思います。本記事では、0.8%ほど存在する例外的存在の真のモンスターペアレントの話ではなく、やり方で何とかなるモンスターペアレントの候補生たちからのクレームを劇的に減らす方法をお伝えしたいです。何事も基本と例外があります。例外の発生確率は極めて低いです。基本をしっかり抑えていきましょう。
目次
今回扱うクレームについて
ここで扱うクレームの定義をしておきたい。保護者からのクレームにも、良いクレームと悪いクレームがあります。
良いクレームはその子だけじゃなくて、学校の子どもたちみんなが成長するような意見です。
悪いクレームはその子にはメリット(最悪の場合はその子にもメリットがない意見もあります)があるが、他の子にはデメリットがあるものです。また、極端に先生の仕事量が増えるような要求も悪いクレームです。これを受け入れてしまうと他の子たちを見る時間が減るし、授業準備の時間も減るので他の子からしても最悪です。
保護者がクレームをする最初の理由
保護者がクレームを学校にする理由は、最初は自身の子どもへの愛から来ています。しかし、その対応に失敗すると、保護者は怒り(時に悲しみ)を持ち、その怒りを自身の正義(尊厳)に変換します。そうなると保護者にとっては正義(尊厳)の戦いになります。正義(尊厳)を振りかざす人を敵に回すとかなりしんどいです。なぜなら、その人は絶対に折れないし、折れたら負けのような気持ちになっているからです。「私(僕)が言わなきゃ誰がいうの?」「私(僕)が変えるんだ。」の状態に保護者がなったらモンスターペアレントの育成は大成功です。さらに、その状態から不利な状況に持ち込まれて、担任の先生の負担を増やすようなその保護者だけに都合の要求(※1)を飲まされてしまうと「私(僕)が言ったら学校は動く」という謎の自信を与えて、クレームが好きな真のモンスターペアレントに進化させてしまう可能性もあります。
(※1)担任の先生があまりにも今まで、良くない動きをしてる時はしょうがないですよ。それは「ご意見ありがとうございます」と言って改善してあげてください。
保護者のクレームは何からはじまるのか
保護者のクレームは何からはじまるかというと、保護者のクレームの9割以上は、子どもが学校での出来事に対する不満を家で保護者に伝えたところからはじまります。つまり、子どもたちを納得させて家に帰すことができればクレームが発生する確率を低くする事ができます。
子どもを納得させる方法
子どもを納得させる具体的な方法には以下のようなものがある。
- 先生のことを大好きになってもらう(基本はこれ)
- ほめておく
- 自分の行動の目的やルールを明確に伝えておき、それにひもつけて指導をする
- 活動する前に必ずこの一言を入れる
- 活動中に必ずこの一言を入れる
- 先生対子どもの状況にしない
- 指導を入れた子と時間をあけてもう一度話をする
先生のことを大好きになってもらう
先生のことを大好きになってもらうは、説明不要かもしれません。私は真のモンスターペアレントを何度も担任してきましたが、子どもから好かれていればその子が私を守ってくれるし、保護者に「絶対学校に電話しないで」、「先生が困るから」と子どもの方から言ってくれていたようだ。(それでもその保護者から電話は来たし、学校にも来た。その保護者は「うちの子は先生と学校が大好きなんです。」、「だから今日は子どもには内緒できました。」と言いっていた。言っていることの意味が全くわからなかったし、じゃあ何をしに来たんだ?という疑問は今も晴れていないが、その子のおかげで、特に大きな負担はありませんでした。)
人は好きな人のことを悪くは言わないものです。人に好きになってもらう基本的な方法は、D・カーネギーの「人を動かす」を読めばすぐ身につくと思います。そちらの方がわかりやすく書いてるので保護者からも子どもからも好かれる基本的な行動原理は割愛します。あとは、休み時間にたくさん遊んで(休み時間に遊びに行かない先生ほど結局クラスが荒れてしまって遅くまで残っている気がする)あげてほしいです。クラスのどの子にも満遍なくたくさん話しかけてあげてほしいです。
ほめておく
子どもに(多分大人もそうだと思うけど)正論を言ったところで、納得などしない。このことを多くの教員がついつい忘れてしまう。信頼していない人からの正論など腹が立つだけである。だから、子どもたちと出会ったその日から、些細なことでもほめて(ただし、授業に関わらないことなら何をほめてもいいが、授業に関わることは才能を誉めるのではなく、成長したところやプロセスを褒めることが大切)おくのです。ほめて信頼を勝ち取っていくのである。子どもは信頼している人からの注意や指導はちゃんと聞いてくれる。ほめる3回につき、注意が1回できるくらいの気持ちでいると良い。ほめるはいざという時に注意や指導をするために貯めておくべきポイントだと思っておきましょう。しかし、信頼関係ができていなくても、指導しなければいけない場面がある。そのために、次の節のことをしておくのである。
事前に自分の行動の目的や大切なルールを明確に伝えておき、それにひもつけて指導をする
4月(できれば、子どもたちと出会ったその日)に自分の行動の目的や大切なルールを学級の全員に周知しておく(必ず4つまでにしてください)と、それに反する行動をとって指導を受けても子どもたちは、「それはそうか」と思って納得してくれます。推奨している伝える内容や、具体的な伝え方は『子どもたちに最初に伝えるべきこと』にかなり具体的に書いたので興味があれば読んでください。かなり具体的に書いたのでそのまま使えると思います。私が、推奨しているのは学校の目的は『一人ひとりの成長』、大切なルールは『みんなの安心・安全』です。自分が色々と考えてきた中で、子どもたちが覚えないといけない言葉は2つしかないですが、非常に多くの場面(いじめ、意地悪、友だちの失敗を笑うなど)に柔軟に対応できる言葉です。
活動する前に必ずこの一言を入れる
子どもたちは、約束していたことがなくなったり、やり直しがとても嫌いです。それが原因で子どもたちからの信頼を失って学級が崩れることも多々あります。しかし、約束していたことがなくなることも、こちらの指導ミスによるやり直し(図工や家庭科、体育などで多い)も存在します。最悪だと思うかもしれないが、対処法はちゃんとあります。それは、活動する前に、〇〇〇〇の場合に、「その活動はなくなること」「やり方を変えること」を活動する直前に伝え、その後に「それでいいですか?」と確認します。これによって、先生だけが決めたことではなくなるし、約束していたことがなくなることがあるということを約束できます。
本記事で推奨する○○○○の場合の伝え方は、以下の通りだが、この方法を使うためには、別の記事の(『子どもたちに最初に伝えるべきこと』)をやっておくことが前提である。
先生「活動の前に最後に確認します。」
先生「一人ひとりの成長とみんなの安心・安全が崩れた時は、その活動は止めることがあるし、やり方を変えることがあります。」
先生「それでよければ活動をしますが、いいですか?」
これを言っておいて、実際に当初予定していたことができなくることや、やり直しが発生しても子どもからの文句はほとんど出ません(普通にやったらめちゃくちゃでます)。子どもが納得しているので、保護者からのクレームも来ません。ただし、活動を止めたり、やり直しをさせるならちゃんと、「一人ひとりの成長」と「みんなの安心・安全」にひもつけて説明するようにしてください。流石に論理的に飛躍がありすぎると子どもは納得しませんのでご注意を。(例えば、「先生が大変になるからできない」などはダメです。この発言はクレーム来ます。)
活動中に必ずこの一言を入れる
実際に活動してみると子どもたちの中で嫌な思いをしている子がいるということは多々あります。そこで、この一言を入れるとその子たちの思いが消化されます。
それは、「嫌な思いしてる人いませんか?」と子どもの活動時間5分後くらいに言ってあげればそれで良いです。
嫌な思いをしてる子がいたら、発表してもらいましょう。そして、「嫌なことを教えてくれてありがとう。じゃあどうしよう?」とみんなでアイデアを出し合って解決策を見つけましょう。この活動をすると、子どもたちの関係がよくなるし、色々な子の思いや考え方の違いを知ることにもつながります。また、子どもたちの問題解決能力を鍛えることもできます。
しかし、何を言っているのかよく分からないことを言い出す子は必ずいます。その場合は、「嫌なことを教えてくれてありがとう。」、「もうちょっと詳しく教えて」と伝え、みんなには活動を続けさせてその子の席の隣に言って、二人で話してください。その子の言っていることが、活動前に伝えた大切なルールやポイントからずれて入れば、全体としてのルールを変える必要はありません。
先生対子どもの状況にしない
先生対子どもになってしまうのは、全てを先生の独断で決めるからです。子どもと決めていれば、保護者からクレームがあっても、「ご心配おかけしてすいません。実は私だけで決めたものではなく、みんなで話し合って決めたものなんです。」「ご意見いただいたことを観点に加えて、もう一度みんなで話し合ってみます」と伝えることができます。こういえば、先生対保護者ではなく、みんな対保護者に持ち込めます。そのため、保護者の怒りの矛先が先生に向くことはありません。子どもと決めると言っても、「この方法でいいですか?」と確認するだけでも良いです。ただし、納得しない子がいることもあります。そうゆう時は、「その方法はみんな成長するの?」や「その方法って先生の方法より安心・安全?」、「みんなはどう?」とみんなに質問すれば良い(『子どもたちに最初に伝えるべきこと』を実施していることが前提)です。みんなを巻き込むことで、その子が不満を持ったとしても、それは先生に対してではありません。実際それでクレームが来ても「他の子で困る子がいたので」と伝えればよいです。ステキなクラスになってくると、先生が考えた案よりも、みんなのことを考えた良いアイデアを出してくれる子が出てくるようになります。その場合は、ぜひそのアイデアを採用してあげてほしいです。そういう経験を学級に積み重ねていくと、みんなのために考えようとする子が増えます。
指導を入れた子には、時間をあけてもう一度話をする
子どもたちの中には、指導直後には納得したように見えても、その後に、怒りや悲しみが湧き上がってくる子がいます(そうゆう人は大人にもいます)。また、指導された理由を忘れて、捻じ曲げて親に伝える子もいます。なので、指導を入れた後に少し時間(最低45分)をおいてから静かなところで、「なんで先生に言われたかわかる?」と聞いてあげてください。全然伝えたことと違うことを言ってくることは多々ありますが、それがその子のリアルな理解です。理解してくれていない場合はしっかり伝え直そう。そのあとで、「何か困ったことや伝えておきたいことはある?」と確認し、子どもの困り感をその場で解消します。これをしておくことで消化されない怒りや悲しみを家に持って帰る子が激減します。つまり、保護者からのクレームが激減します。
終わりに
本記事では、クレームが大好きな極少数の真のモンスターペアレントのクレームを減らす方法ではなく、クラスに何人かいるモンスターペアレント候補生のクレームを激減させる方法について書きました。具体的に色々書きましたが、基本的に先生の子どもたちを大切にする気持ちが子どもたちに伝わっていれば保護者からの嫌な連絡(クレーム)はそう来ません。モンスターペアレントなど恐れず、目の前の子たちと楽しい時間を作っていればそれでいいです。私自身元々子どもが好きだったわけでもありませんでしたが、教員になり担任をすると子どもたちがきっと可愛くなります。子どもたちは先生を頼りにしています。そして、子どもたちの多くは先生のことが大好きです。不安がらずに、一度小学校の先生になってみませんか?少なくとも、残業時間があまりにも長く、今の仕事が辛くてしょうがない人にはお勧めしたいです。