本記事では、子どもの成長していくプロセスや、成長する理由についてたくさんの子どもたちを観察してきた中で、多くの子どもに当てはまることを原理原則としてまとめる。もちろん例外はあると思うが、本記事では、あくまでも多くの子が該当する基本を抑えることを重視している。クラスで気になるその子が今の姿になった原因を考えることにより、その子に対してより効果の高い指導をするためのヒントとして欲しい。小学校の教員の中には、子どもに対して腹を立ててしまう人が少なくない。腹が立つのは一生懸命であるからだとは思うが、怒りの感情は気持ちのいいものではない。本記事の考え方を採用すると少し冷静に子どもを見ることができるようになるので、うまく活用してほしい。
本記事での成長の定義
本記事で扱う「成長」について定義する。外部刺激に対する子どもたちの行動が時間軸の経過によって変わることを成長とする。そのため、成長という言葉には、一般的に良い意味として扱われることが多いが、本記事で定義する子どもの成長は、必ずしも社会的に、また保護者、教員にとっていいものであるとは限らない。
例1
A君は1年生の時には、友だちに「あほ」と言われると、泣いていた。しかし、その子が6年生になると「あほ」と言われると笑いながら、流すようになったとする。
学年 | 外的刺激 | 行動 |
---|---|---|
1年生 | 「あほ」と言われた | 泣く |
6年生 | 「あほ」と言われた | 笑いながら、流す |
この場合、外部刺激は同じだが、6年生になって行動が変わったので、本記事においては、成長したものとする。
例2
B君は1年生の時には、友だちに「あほ」と言われると、泣いていた。しかし、その子が6年生になると「あほ」と言われると言った相手を叩くようになったとする。
学年 | 外部刺激 | 行動 |
---|---|---|
1年生 | 「あほ」と言われた | 泣く |
6年生 | 「あほ」と言われた | 言った相手を叩く |
この場合、日本社会においては、1年生の時の行動の方が法律上望ましいが、本記事においては、外部刺激に対する行動が6年生になって変わったので成長したとする。
成長のはじまりは何か?
成長のはじまりは何らかの外部刺激である。そして、子どもたちは、大小様々な外部刺激を絶えず受けている。外部刺激は、保護者、家族、友だち、先生などの人から受けるものだけでなく、テレビ番組、youtube、ゲーム、漫画、雑誌などありとあらゆる外部からの情報すべてを指す。
子どもがその行動を選択する理由
外部刺激に対する子どもの行動選択の理由は以下の二つしかない。
・反射的に行動してしまった
・その行動を選択すると何らかのメリットがある
小さい子どもほど、外部刺激に対する行動は反射的なものであり、思考を十分に働かせていないことが多い。しかし、年齢が上がるにつれて、その行動を選択することによって得られる利益(メリット)を理解して、行動するようになる。
大人から見て、「なぜ?」「どうして?」と思うような行動であっても、その行動が反射的なものでないのなら、その子にとって何らかのメリットが隠れている。
成長は何によって起こるのか
成長は、外部刺激に対して、その子が実際に実行した行動に対する結果をその子が評価することによって起こる。その子にとって評価が高いものは再実行されるし、悪いものは改善される。これは、社会的な評価ではなくあくまでその子自身が決める評価である。
改善されるといっても、次からはもうしないという単純なものではない。例えば嘘をついたことがバレてしまって、ものすごく怒られた子がいるとする。この場合は、ものすごく怒られているわけだから行動に対する評価は低い。しかし、改善されるといっても次は嘘をつかないを選択するとは限らない。あくまでもその子にとって利益の高い行動をするので、次はもっとうまく嘘をつくを選択する可能性は十分ある(実態でいうとこちらの確率の方が高い)。
成長はある程度はコントロールできる
前節で、成長はその子自身の評価によって決まると書いたが、実は外部からでもある程度はコントロールすることができる(書いてること怖!!)。どうやるかというと、その子の行動に対するその子の評価を外部からの圧力でコントロールすればいいのである。簡単にいうと、その子の行動を外部からの圧力で成功体験にすることできれば、その行動をするメリットを作ることができる。そのため、同じ条件化においてその子が、同じ行動をとる確率を上げることができる。逆にいうと、その子の行動を外部からの圧力で失敗体験にすれば、その行動をするメリットが無くなり、同じ条件下においてその子が、同じ行動をとる確率を下げることができる。しかし、成功体験や失敗体験は、その時点での子どもにとって最も有益な行動を選択するための手助けにはなるが、最終的には子ども自身がその時の状況や環境に応じて、最もメリットが高いと考える行動を選択する。そのため、今までに嘘をついたことによって怒られてきた失敗経験があったとしても、嘘がバレない時のメリットが非常に高ければ子どもが嘘をつく方を選択する可能性は十分にある(大人も同じですよね)。
では、小学校の教員ができる圧力とは何かというと、『ほめると叱る』である。要は、望ましい行動には、ほめる指導を行い、望ましくない行動には、叱る指導を行うということである。
これは今までに何人もの子どもたちに効果があったのだが、嘘をついてしまった後に、本当のことを言えた子を「一回誤魔化してしまった後に、本当のことを言える人はほとんどいない。あなたは本当に勇気のあることをしている。」と、ものすごくほめた後に、保護者に電話にして、それがいかに凄いことかを伝え、さらにここで必要以上に叱りつけると、その子が本当のこと言ったメリットがなくなり、次から本当のことを言わなくなってしまうことを保護者に伝えた。意図を汲んで、正直にいったことを学校とお家で協力して成功体験にできた子は、次から嘘をつく確率が本当に下がった(0%になるわけではない)。
しかしながら、子どもたちの自己評価は、教員だけでなく、保護者、友人、そして流行など様々な外部要因から影響を受ける。低学年の場合、保護者や教員からの影響が大きいが、高学年になると友人からの影響が増す傾向にある。そのため、教員の『ほめる・叱る』だけでは不十分である。しかし、具体的な方法はまだ述べていないが、高学年になっても効果がある方法は存在する。次回、その方法について詳しく書きたいと考えています。
終わりに
本記事では、子どもの成長していくプロセスや、成長する理由についてたくさんの子どもたちを観察してきた中で、多くの子どもに当てはまることを原理原則としてまとめている。原理原則を書いたのは、原理原則を知っておくと応用が効くからである。しかし、それぞれの教員の先生がたに、具体的な方法を考えてもらっては、『小学校教員らくらく仕事術』というブログを立ち上げた意味がない。次回の記事では、具体的に子どもの成長をある程度コントロールする方法について書くので期待してほしい。