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子どもたちに最初に伝えるべきこと

 小学校の先生にとって、最も重要な時期はまず間違いなく担任する子どもたちと初めて出会う4月である。4月を制するものは1年を制する(勝手に作った言葉です)。黄金の3日なんて言われることもある(これは本当にある)。本記事に書いた魔法の言葉を4月に言い続けて子どもたちにおぼえさせて欲しい。最初の一週間は毎日朝の時間に。子どもたちが覚えてきたら、一週間に1回に減らしても良いが、とにかく言い続けてほしい。最初にお伝えしておくが、実際に子どもたちに向けて使い続けてきた(私自身も、他の先生も)実績ある言葉なので、大人が聞くと日本語がおかしいように思うところもあると思います。しかし、日本語よりも子どもたちに刺さる言葉や文章を優先しているので、その辺は目をつぶって欲しい。(美しい日本語も伝わらなければ意味がないので)

子どもたちと出会ってまず伝えるべきこと

 4月は学校によっていろんなはじまりかたがあります。しかし、大体どこの学校も1時間目に始業式という1年のはじまり式があります(校長先生がお話するやつです)。その式の前でも、その式の後でも良いので、子どもたちが座った状態で落ち着いて話せる時間ができたら、まず伝えるべきことを、以下に示します。

(1)自己紹介(名前、趣味、特技など)

(2)学校の目的と大切なルール(超重要)

(1)は、本当に軽くで良い。何なら趣味や特技の話さえ必要ない。児童は、たくさん喋っても覚えられないのだから。また、初日に楽しませすぎると話が聞けなくなり、収拾がつかなくなります。それが好きな人は構わないのだけど、本ブログはできるだけ楽に仕事をする方法を推奨しているので、わざわざ大変になるようなことはお勧めしない。そもそも自己紹介は、(2)の話を聞いてもらうために、必要なのでするにすぎません(何者かわからないやつの話は聞けないので)。

実例で示すと、

担任「今日からみんなの担任をします。〇〇〇〇です。」

担任「1年間よろしくね。」

担任「さっそくなんですが、みんなに必ず理解しておいてほしい大切な話があるので聞いてください」

この後、次の二つの文章を黒板の左上に大きく書いてから話ははじめて欲しい(初日は子どもが緊張しているので、書いておかないとまず覚えない)体育館などで学年で行う場合には、4つ切り画用紙二枚をはりあわせて大きくマジックで書いておくと良いです。

↓学級びらきや4月の最初に伝えておくと楽になること

学校の目的

・一人ひとりの成長

大切なルール

・みんなの安心・安全

 これを、書き終えた後にみんなで一度、声に出して読んでから説明をすると、なお一層効果的です。それでは、話すことの続きを書きます。

担任「学校の目的は、一人ひとりの成長です。みんなはできないことをできるようになるために学校に来ています。私たち教師の仕事はみんなを今日よりも明日、明日よりも明後日にできることが増えるようにお手伝いをすることです。」

担任「一人ひとりって書いているのは、人によって成長の速さや得意なこと、苦手なこと、そして将来の夢が違うからです。」

担任「今できないことが少しでもできるようになったら成長です。」

担任「逆に、もともとできることができてもそれは成長ではないです。」

担任「例えば、このクラスで走るのが一番速い人がいたとして、何回か授業した後にやっぱり一番速かったとしても、その人のタイムが良くなってなかったら成長したとは言えません。」(←これをいっておくと、苦手なことに対してやる気を失う子やすでにできることに取り組む時にふざける子がいなくなる、それぞれの子が自分なりに努力するようになる確率が上がります。)

担任「ここまで良いですか?」ここで必ず区切って確認してください。相手が子どもであっても一つ一つ確認しながら進めることで、認識の違いが減りますし、認識が違う子が出ても、多くの子どもたちが理解してくれていれば、認識が違う子をその子たちが止めてくれるるようになります。)

担任「次に大切なルールはみんなの安心安全です。」

担任「たとえ誰かが成長できたとしても、そのために、誰かの成長の邪魔になるようなことをゆるすことはできません。」

担任「今、伝えた学校の目的や大切なルールが崩れた時には、それを放っておくことはできないので止めます。また、場合によってはみんなで話し合いをします。」

担任「クラスで何かを決める時も、この二つを守れているかを考えてから意見を言ってください。」

担任「これも良いですか?」

担任「しっかり聞いてくれてありがとう。」

ここまでが学級びらきで必ず言わないといけないことである。

 初日に子どもに指導を入れると関係が崩れたり、大きく信頼を失うことがある。しかし、これを最初に伝えておくと、あらかじめクラスで確認をとっているので、上記を理由に指導を入れても、子どもからの信頼を失うことがない。

 また、一年生を担任した場合には、上の文章だとわからないので、以下のように伝えます。

がっこうってなにするところ?

・できないことをできるようにするところ

・みんながにこにこすごすところ

 ここで示した4月に伝えるべき魔法の言葉は、子どもたちの道徳性や思考力を高め、あなたの助けになることはまず間違いないでしょう。4月だけと言わず、毎月伝えるとより効果があるし、特にゴールデンウィーク明け、夏休み明け、冬休み明けには、しっかり時間をとって再度伝えて欲しい。

学校の目的大切なルールの浸透のさせ方

 4月は戦いである。子どもたちは、果敢に試し行動をとりまくってくる(どこまでやったら担任の先生からの指導がくるのかを見定めてくる)。その時々の対応にミス(Aくんは良かったのにBくんは指導を受けた、やってよいときといけないときの基準が曖昧など)があると一気に不利な状況になり、子どもたちからの信頼も失う。そんな時に、学校の目的や、大切なルールを軸として持っておくと非常に強い。その二つが崩れそうだと判断した時に、しっかりと子どもたちの行動を止めて、「ちょっと止めるね。」「なんで今止められたかわかる?」と聞けば良いです。しっかりと考える時間を与えても、相手が答えられない時には、学校の目的や、大切なルールに紐つけて話をしてあげれば良いです。

 例えば、友だちの失敗を笑った子がいたとする。叱りつける必要はないが「ちょっと止めるね。」「どうして止めたかわかる?」と聞く、時間(2から3分くらい)は与えたが相手は答えられないときには、「私が大切にしてる二つのことを覚えてる?」(どの子も答えられるように、掲示物を作って壁に貼り付けておきましょう。)その子が学校の目的と、大切なルールを答える。「覚えててくれて嬉しい」(褒めれるところは褒めるのも技です)

次は、基本的な指導コンボであるので、よく覚えてほしい。

「成長するためには、失敗するようなことを練習するってことだよね。」

→「もし、失敗したら笑う人が教室にいたら、どうなると思う?」

→「失敗することしなくなるよね?」

→「じゃあ成長しなくなるよね。」(ここにつなげるのである!!!!)

→「学校の目的からずれるよね。だから止めました。」

→「次からどうする?」

 この一連の指導はかなり効果的です。ただし、6月くらいまでは、「ちょっと来てもらっていい」といって、同じ学級の子には見えにくいところまで連れて行って指導してあげたほうが良いです。(プライドが高い子もいるし、まだ信頼を得られてないので)

 止める判断の仕方は、クラス全員がその行動を取るようになったら、どれだけの損失が出るかで考えると良いと思います。また、優先順位(人が傷つくことは優先度が高いので、必ず止めもしょう。)をつけることも大変重要であるため。大きく傷ついている子や困っている子がいないなら、ある程度見逃すのも重要である。

 また、別のパターンで、何でもかんでもルールを全部聞いてくる子が存在する(どこの学校にでもいます)。その子が聞いてきた質問がみんなに関わることであれば、「みんなと確認したいから発表してもらっていい?」と伝えてみんなの前で言ってもらう。無理そうなら、代わりに「〇〇さんが質問してくれたんだけど」と言って、みんなに伝えてもよい。そこで、ルールについてみんなで考えると、学校の目的と大切なルールを意識して考える力がつく。そういうことを繰り返していくうちに、何でもかんでも聞いてくることもなくなるし、周りの子たちが勝手に答えを出してくれるようになる。例えば「それやったら、困る人でてくるよ。」など。

 この子たちは意外と厄介な存在で、休み時間でも授業時間でも、「ちょっとだけやったら〇〇していい?」と個人的にコソコソとグレーなラインのことを聞いてきては、先生から個人的に許可をもらおうとする。許可をもらうと、まぁ怪しいラインのことをしはじめたり、許可をとったことを自慢するかのように、周りの子に見せびらかす。そして、友だちに注意を受けると「先生いいって言ってたで」と言って、虎の威を借る狐の如く、権力を振りかざすのである。問題を起こしてしまったとしても、その子からしたら、先生に聞いているので、先生の責任にできる(意味なんて頭がいい手法)のである。しかし、そんなことには付き合ってないられないので、前に述べたとおり、「みんなに関わることだから、みんなに聞こう」と言えば、それで終わりなのである。あとは、許可を出すときに「一人ひとりの成長とみんなの安心安全がくずれたら止めるけどいいね?」と言っておけば、問題行動があった時すぐに止めることができる。

 子どもが言ってきたことを断るかどうかの判断基準は、学級の全員がその行動をとっても成り立つかどうかで判断すると、まず間違いなくミスはない。その他の子どもに対しても「それってみんなができないことでしょ?」と言えば、納得してくれる。(もちろん、学級びらきで、「一人ひとりの成長」と「みんなの安心・安全」の話をしていればである。)

 

なぜ、この二つを伝えるのか

 別の記事「学級経営って何するの?」で書いているが、学級経営では、クラスルールの設定と遵守が学級の規律維持のためにやるべきこととして多くの教員向け図書に書かれている。しかし、多くのルールには抜け穴(そもそも一つひとつのルールが実態に合っていない)が存在する。「廊下を走ってはいけない。」「授業中トイレに行ってはいけない。」などのどこの学校にでもあるようなルールでも、守らなくていい例外(体調が悪かったら仕方ない)がある。抜け穴を埋めるためのルールを設定したとしても、そういった対処療法的な方法ではまず間違いなく矛盾が生じてくる。矛盾が生じなくても新たな抜け穴を発掘されて、イタチごっこになる。イタチごっこになると最後、もう誰もルールを守らない。ルールが多すぎて覚えられないし、ルールを守らない方が明らかに得だからである。また、先生や友だちを論破してルールを破ることに生きがいを覚える子も現れる。

 上記の二つ(「一人ひとりの成長」「みんなの安心・安全」)を先に伝えておくと、ルールを作るためのルールを設定し、ルールの範囲を決めることができる。そのため、現状に合っていないルールは子どもたちを主体(子どもたち主体にする方法はまた書きます。)として作り変えることができる。子どもたちが主体的に作るとはいえ、「一人ひとりの成長」「みんなの安心・安全」があれば、誰か一部の子が得をしたり、傷つく子が出るようなルールを作ることはできない。(もし出たら、それを理由に作り変えれば良い)そして、子どもたち自身が作ったルールは子どもたちはちゃんと守るのである。また、複雑で細かいルールを設定しなくても、学校の目的と大切なルールを守ろうとすると、そもそも他者に不利益や迷惑をかけるような行動は取れないのである。